ふつうの婚  〜Mr&Mrs AKABANE









 絶やさぬ笑顔と人当たりで病院内外人気は抜群。けれど時々メスを見つめて笑っている姿がちょっとアレ、と言われている赤屍医師は、カルテを見ながら昨日の結婚カウンセリングの事を考えていた。

 アロマピスト兼占い師などとレアな職業についている妻とは、ふつうに出会いふつうに先々月結婚した(※ホントか?)

 その妻と行った結婚カウンセリングは、同僚に何度も頭を下げられて仕方なく行ったものだが、その質問の的外れなこと。あろうことか「セックスの頻度は?」などと聞かれたときは、体内から銀のブツをだして制裁を加えてやろうかと思ったが、妻の目もあったので止めておいた。

 聞くに堪えない愚問の末の、最期の質問は


 「貴方がたの結婚満足度を数字で表すと?」

 答えは、赤屍が「8」 妻の卑弥呼が「5」

 ――50点?

 これが赤屍には納得いかない。

 そもそも学生時代から満点か満点に近い点しかとったことがない赤屍はそんな低得点が信じられない。自分に何の落ち度があるのだろう?家事だって分担して二分しているし、いやいっそ自分が二割増しで負担を負っているし、浮気なんて興味も欠片も粉粒もないし、時々アクシデントで出てくるエキセントリックでエレクトルカルパレードな卑弥呼の手料理にもよく耐えているし…

 ――わかりませんねぇ。

 首をかしげて、赤屍医師はカルテを置いた。








 自宅のドアノブが、すんなりと回った瞬間。赤屍は自分が生命に関わる重大な失態を犯したことに気づいた。

 「おかえりー!」

 扉を開けると、卑弥呼が出迎えた。エプロンを着て。(重要)

 「…今日は早かったんですね卑弥呼さん」

 「そうなの。今日テラピーの方でキャンセルが出ちゃってねー」

 赤屍は内心強く舌打ちする。なんてことだ。一体なんのために自分が毎日七時には帰ってるのだと…

 一回り歳が離れている新妻のエプロン姿は可愛らしいが、その先の食卓には可愛くないとか、そんな生易しい言葉では済まされないものがあるのは…

 「だから、今日はあたしが料理番よ」

 …決定だった。

 今日は何が出てくるのか。お願いだから先日のピンクと水色のマーブルシチューは勘弁してほしい所だ。

 悶々と考えている赤屍が食卓を目にすると、食卓の上には胸に包丁が刺さった一頭の熊がどんと乗っかっている。何かの魔術か。

 ――自分は妻にオカルトに走らせるほど、何か追い詰めることを?

 「ほら、今夜はご馳走でしょう?」

 これが夕飯?

 「……卑弥呼さん、私には心なしか,どこからどうみても多分あらゆる方法を使っても、調理跡が見られないような気がするのは、気のせいですか?」

 まさかこれを食べろと。

 この話はいつから、某映画パロから鬼嫁日記パロになったのだろう?(※あながち間違いでは…)

 「ああ。調理はこれからやるのやるのよ。実は私が考えている新しいアロマテラピープログラムなの。それを試そうと思って」

 「それは斬新な…」

 熊を目の前で調理するテラピー??

 多分、際めてマイノリティな嗜好を持つ人間しか癒されないだろう。

 …設定に無理がありますね(※それを言ってはいけません)

 「あんた肉の焼き方の好みってなんだっけ?」

 「…そうですね。ミディアムレ」

 ア。と言うと同時にぼうっと目の前の熊が炎に包まれる。

 「火炎香」

 メラッメラッと家の中で炎が燃え上がっていく。

 オレンジの火が天井に届きそうだ。

 ――アロマ?

 バチバチッと楽しいキャンプファイヤーから飛んでくる火花を、手でキャッチする。

 「………」

 ――・・・テラピー??

 しばらくして妻から切り分けられた肉の皿を渡される。

 肉の左側はウェルダン(毛つき)右側はレア(内臓つき)

 ――ミディアムレアってこういう……?

 数秒。無我の境地を漂って、皿の上の肉を見つめる。

 「……卑弥呼さんは本当にミステリアスで素敵な女性ですね」

 「何言ってんのよ」

 ぐしゃ、ぐちゃ、と熊の内臓付近を切り分けながら照れる新妻。

 赤屍医師は表面で穏やかに微笑みながら考える。






 ――本当に私の妻はただのテラピストなんでしょうか?



続く。


     







これはもしや、パロ、れて、ない?(爆)